200年目の鐘



              Ding-dong3
                〜心の試練と灼熱の炎〜

 一瞬地面が縦に揺れたかと思うといつの間にか四人は薄い若草色の建物の前に立っていた。
「此処が、風の神殿…か?」
「あまり水の神殿と変わらないんですね」
「色しか違わないんだな」
「まあ建物なんてそんなもんだよ」
「そうですね」
 おいおい。
 呆れた表情で二人を見るラウルとクロノス。
 元も子もないリノの意見に平然と同意するリラ。
 一筋の風が四人の間を通り抜けた。
 風に誘われるように一同は神殿の方を見つめる。
 神殿の扉は自然に開いた。だれも触れてはいないのに、ただそれが当たり前だと言う様に、何の違和感も与えなかった。
「入れ、と言う事か?」
「そうらしいな」
 リラは無言で扉に向かって歩き出し、その後にまた三人が続く。
 一段一段階段を登り、扉の前まで来ると中の様子がはっきり

と分かった。
 水の神殿とは違う。
 そこはもう風のマスターが居る部屋だった。
 中心に佇む一人の人影。

 子供だった。
 幼い顔立ち。リラの胸の辺りまでしかない背丈。
 その隣には、長い、透き通る様な緑色の髪を、腰まで伸ばした美しい女性がやさしく微笑み、立っていた。
「ぎゃはははっ」
 沈黙を破り、それは静寂の中に木霊した。
 それはリラが二人に近づこうとした時だった。
 リラは立ち止まると、訝しげな顔をして振り返った。
 彼女の目には、お腹を抱えて笑うクロノスの姿が飛び込んでくる。
「相変らず小さいなあ、お前。それでホントに大人かよ」
「マスター、いい怪訝にしなよ」
「だってよ、いつ見てもおかしくて」
「クロノス、そういう事を笑うのはよくないと思う」
「でも、駄目だ、笑い止まんねー」
 リノとラウルが注意しているにも関らず彼は容赦なく笑い続けた。
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