200年目の鐘



              Ding-dong 6
                  〜悲しい嘘〜

 風が頬を撫でた。その寒さにラウルは思わず身を起こす。
 森の中、うっすらと眼を開けると、視界の先には白い王の城の壁が見えた。
「…っ、皆は…?」
 頭を振り、辺りを見回したがそこには精霊の姿もマスターの姿もない。
「最悪だ」
 ラウルは呟き、そして立ち上がった。止めに来た筈がリラを残してまた何処かへ飛ばされてしまった。
 今すぐにでも自己嫌悪に陥りそうだったが、取り合えずそんな事をしても仕方がない、今の状況を知る方が先だと思いなおし、そして、目の前に見える城へ行くことにした。
 あそこならば或いは今の時代も時間の移動方法もわかるかもしれない。
 もし母親がまだ居ない、もしくはまともならば。
 そうでなければ…。
 ラウルは再び頭を振った。
「とにかく、行くしかない」
 そのまま歩みを進め、城の前まで行く。

 どうしたものか、そう考えていたとき、門から顔を出した兵士を見てラウルは一瞬動きを止めた。
 見覚えのある顔、そう、あれは…。
「あ、ラウル」
 ラウルが歩み寄るより先に兵士の方が気づき、そして手を上げてにっこりと笑った。
「またルーン王に会いに来たのか?」
「ルーン…王…」
 ラウルはその名を口にすることでやっと確信した。ここは自分の本来生きていた時代。
「ルーン王は生きているのか!?」
 突然我に返ったようにラウルは兵士に掴みかかると問いただすように叫んだ。
 兵士は目を丸くして、そして笑いながら言う。
「何言ってるんだ、ラウル。寝ぼけてるのか?何故ルーン王が
 生きていないんだってうわっラウル!?」

 ラウルは見知った兵士を突き飛ばすと勢い良く城の中へ駆け込んだ。
 奥の扉をまた勢い良く開け放ち、息を切らしながら部屋に入り、そして止まる。
 ホールの中の玉座、そこに座る懐かしい人。数年前に母親が
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