200年目の鐘



         Ding-dong 7
           〜魂の行く末〜

 転移装置、それはその石の力だけで用意に動かす事はでき た。一気に森の中心部まで来るとそこには透き通った零体のような女が一人、さらに奥に進んでいく姿が見える。

「ユリアー!!」
 頭で考えるより先に、ラウルはその名前を呼ぶ。
 ユリアは凍りつくような冷たい視線をラウルに向け、そしてその場で止まった。
 握り締めているものを見、そして不適な笑みを浮かべると楽しそうに口を開く。
「ラウル、お前、わざわざ私に持ってきてくれたのか?その  石を」
「何?」
「ああ、そうか、今度はお前が…。その身体ごと私に渡しても
 らおう!」

 歩いて向かってくるのではなかった。彼女は飛びながら猛スピードで彼の方へ突っ込んでくる。
 ラウルは反射的に両腕を前に出し眼を閉じた。
「…っ」
 一瞬腕に痛みを感じ、瞳を開くと、ユリアは自分から少し離 

れたところで佇んでいる。
「馬鹿な、何故入れない!?」
 どうやらラウルの身体から弾き飛ばされたようだった。
「お前には無理だ。ユリア」
 声はユリアの背後から聞こえてきた。
 ユリアは睨みつけるように振り返りそして言った。
「兄上」
「兄…上…?」
 ラウルは問い返した。目の前に居たのは黒のローブに藤の
杖。時の神だった。

「私には無理だと?ふざけるな!何故私がこんな小僧にっ!」
 ウィルは静にユリアを見詰めて言う。
「人の想いは強いもの、それは死しても時のように永遠。ラウ
 ルへの想いを三つも抱えたお前には、彼に触れる事はできな
 い」

「三つ…だと…?」
「ルーン王、マリア、そして…お前の仲に残るリラの意識」
「死んだものの想いなどっ!」
「ユリア、それはお前が一番良く知っている筈。現に今のお前
 がそれだろう?」

「……」
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