DEEP-SEA KING



          Prologue
                〜長き眠り〜

何もない、ただ広い土地を駆け抜ける二つの影。一人は息を切らし、一人は平然とその横を走っている。
「まさか…あいつが狙ってるなんて…」
額から脂汗を流しながら季瑠は言った。
「季瑠…少し休んだ方がいいのではないか?見張りなら私
 が…」

「そういう訳にもいかないのよ」
 あまりに辛そうに見えるで言ってみたのだが、ぴしゃりと断られる。
その横顔を見ながら火乃杜は強いな、そう感じていた。
しばらく走り続けると、やがて一つの洞穴が見えてきた。
「…ちょうどいいわ。火乃杜、あそこに入りましょう」
「…ああ」
 二人は暗い穴へと駆け込むと、季瑠は急いで持っていた道具で結界を張る。
 洞窟の中は意外と狭く、しっとりと湿っていて火照った身体を少しずつ冷やしていった。壁面に寄りかかりながら一息を着き、火乃杜の方を向いて哀しく微笑む。

 火乃杜はその笑みに答えるように笑い返し頷いた。
(ここで…)
 そう確信した。そして洞窟の一番奥まで行くと、季瑠の方をむいて黙って佇んでいる。

「ごめんね…火乃杜」                                   
本当に哀しそうに言う季瑠に火乃杜は首をふり答える。
「私は季瑠の造ったもの。構わない」
「…あたしは愚かだった。死んだものなど、生き返らせようと
 するべきじゃなかったのに…」

「季瑠。過ぎた事を後悔しても仕方がない。それよりも事態の
 悪化を防ぐ方が先、そうだろう?」

「…そう…ね」
 沈んだ声で、迷う自分の気持を抑えながら季瑠は火乃杜の瞳を真っ直ぐと見据え、一つのメダルを取り出した。
「…あなたを…これから封印します…」
 季瑠が眼を細めメダルに力を集中した時、そこからまぶしい光が放たれる。
火乃杜は静に眼を閉じた。

 メダルが砕け散ると、季瑠の目の前には氷に包まれた火乃杜
        
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