光の扉闇の門



第1開
〜届かぬ願い〜


 ひんやりとした風が頬を撫ぜ、エイリィーンは目を覚ました。
「……ここは…っ」
 身を起こそうとして、腹部にするどい痛みを感じ再びその場に体を投げ出す。
 森の中、木々の間から見える夜空を見ながら、彼女は目を閉じた。
「…そうか…私は…」


 黒は魔の象徴、黒は災いの元。
 黒き髪、黒き瞳。
 白い肌はそれを一層引き立たせていた。
 誰も、声をかける者も居ない、ただ孤独の中のすさんだ生活。
 自分は何故こんな所にいるのか、それすらもわからなかった。
 感情を失いかけた時、  
「もう、大丈夫よ」
 そう言って差し伸べられた手、顔を上げたその先にあったやさしい笑顔。
 同くらいの年の少女。
 自分とは違い、華やかな格好をしたその少女の顔に浮かぶ寂しさ。
 その笑顔はとても安心して、そして自然と涙があふれた。
 差し込んだ一筋の光。
 その時エイリィーンは誓ったのだ。
 この少女を、護ろうと。


「リドレスティ様!?何処にいらっしゃるのですか!?」
  城壁は崩れ、兵士は倒れ、白い筈の床はいまや赤く染まっている。
  所々煙が立ち、悲鳴が上がっていた。
  向かってくる敵を切り伏せながら、エイリィーンは必死で主の名を呼ぶ。
 住み慣れた城がやけに広い。
 ――何故こんなことにっ。
  エイリィーンはなおも彼女の姿を探しながら唇を噛んだ。
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