この国、シルフェイ王国の姫、リドレスティの魔力はすさまじかった。
周りの国は彼女の力を恐れた。
もちろん、リドレスティはその力をどうにかしようなどとは考えては居なかった。
それでも、怖かったのだ。
だから隣国は手を結んだ。
滅ぼしてしまおうと。
年頃になった彼女を、どこかの国が先に手に入れたりしないようにと。
そんな日に限り、彼女の傍を離れた自分を恨んだ。
「リドレスティ様!?」
主の部屋を開け放ち、その名を呼ぶ。
その部屋にも彼女を護ろうとしたのか兵士の死体が転がり、血生臭い臭いが立ち込めていた。
王も王妃もみつけた時はもう息をしては居なかった。
それでも、エイリィーンは諦める事はできなかった。
そこに居ないのならば、次の部屋。
そう思い、踵を返した時、
「エリィ…?」
天幕の影からか細い声がした。
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振り返った先には、血を浴び、涙を流している彼女の姿が合った。
「あ…リドレスティ様、良かった」
安堵して振り返った時、
「エリィ!?後ろ!」
悲痛な彼女の叫び声で再び振り返ると共に、その腹に深々と剣が突き刺さる。
「っつあっ」
痛みに歯を食いしばり、敵の体を横になぎ払った。
血しぶきが上がり、敵のその体はその場に崩れ動かなくなる。
エイリィーンの体に刺さっていた剣は、乾いた音を立てて地に落ちた。
「いやあっ、エリィ!?」
彼女はなおも涙を流しながらエイリィーンに駆け寄ると、首を何度も横に振る。
「だ、いじょうぶです、これくらい、問題ありません」
「大丈夫な訳ないでしょう!?だって!剣が!貫通してたんで
すよ!?血だってこんな…」
エイリィーンはとても穏やかな顔で、リドレスティを抱きし
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