200年目の鐘



          Ding-dong 1
             〜霧の中の影〜

 どの位時間が経ったのだろうか。どうやら自分は死んではいないらしい、そのことはすぐに理解できた。
 しかし目を開いているのに何も見えない。ラウルはゆっくりと起き上がり首を軽く振ると、辺りを見回した。
 眼が見えなくなった訳ではないらしい。辺りの薄暗さと濃い霧が視界を悪くしているのだった。
 しばらくその場に佇み真っ直ぐ前を見つめた。
 一体此処は何処なのか、自分は今どうすべきなのか。
 しかしこの霧ではこれ以上進むことはできない。闇雲に進めばこの濃い霧の中に吸い込まれ、永遠に帰って来れないような気がした。
 霧が晴れるまで此処に居ようか。
 そう考えた時、背後で足音が聞こえた。それはだんだん大きさを増し、真っ直ぐ自分の方へ近づいてくる。
 ラウルは後ろを振向くと、剣の柄に手を掛けた。
「お待ちしておりました」
 聞こえてきたのは静で落着いた少女の声。そしてその声に反応するかのように、あれだけ濃かった霧は一瞬で晴れていった。辺りには沢山の木や草が生い茂っている。


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