STONE 1
〜目覚めそして運命〜
夢をみていた。長い長い夢。何かから逃げる夢。そう、暗く冷たい意識の底に沈む前、悲しそうな顔を見た気がする。あれは誰だったのだろう?何故?その答えに手を伸ばそうとする
が、いつも身体を動かす事はできなかった。でも、今は違っ
た。懐かしい波動を感じふと眼を覚ます。身体を起こしたその先には誰かが居た。焦点の合わない瞳で顔を見ようとするが良く見えない。あれはあなたか?私はこの波動を知っている?そうだ。そのとき火乃杜は理解した。あなたは最後に泣いてい
た。顔にはださなかったけれど。そう、貴女は…
「…季…瑠…?」
無事だったのか?そう言おうとした時、火乃杜の意識は再び暗闇の中へと沈んでいった。
「ん…」
ぴくりと眉を動かし眼を開けると、そこは見知らぬ何処かの家だった。
「ここは…何処だ…?季瑠は…?」
火乃杜は半分身を起こす。辺りを見回し額に手を当てると嘲笑し首を振った。
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「家の雰囲気もかなり違う。私はずいぶん長い間眠っていたよ
うだな。ようするにどちらにしろ季瑠はもう…居ないな。長
く寝すぎて寝ぼけていたのか…?いや、そういえば封印され
る前に季瑠は…確か…」
取り合えず外に出ようと起き上がろうとした瞬間、何故か足に力が入らず火乃杜はその場に膝を追った。
「…霊力が足りないようだ…」
どうしたものか、その場に座ったまましばらく考えている
と、不意に隣の部屋から声が聞こえてくる。
「しかし大丈夫かな。紅夜様は確かにすごい対魔士だと聞いた
が、何もお前を囮に使わなくてもいいだろうに…」
「仕方ないわ、お父さん。妖怪に狙われているのは私何だも
の。これ以上犠牲者を増やさない為にも…ね。紅夜様は一度
も妖怪退治に失敗した事がないって言うもの。きっと大丈夫
よ」
「…妖怪…」
火乃杜はその言葉に反応した。
「だがお前に万一の事があったら…」
「その話詳しく聞かせてもらえないか?」
火乃杜は勢い良く襖を開けると笑いながら言った。
「ああ、気がつかれたんですね、よかった」
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