「世話になったようだな。それよりさっきの話、どういうこと
だ?」
「実は最近この村に…」
「お父さん!?」
娘は男の言葉を慌てて遮ると苦笑しながら言った。
「何でもないんですよ。それよりもう少し体を休めて下さい」
「ありがとう、だが問題ない。…妖怪…との事だったが」
「ですから何でも…」
「囮とか妖怪とか対魔士とか、私には何でもないようには聞こえないのだが?」
「…」
火乃杜は微笑むと言葉を続けた。
「私を巻き込まないようにしようとしてくれている心遣いはあ
りがたいが、心配は要らない。話してくれないか?」
「…私達の村に最近になって妖怪が住み着くようになったんで
す。血を吸う妖怪。妖怪は村の女達の血を好み、毎夜一人づ
つ差し出せと…。そして今夜は私の番なのです。逃げ出そう
としても妖怪は追いかけてきて、誰一人として今まで助かっ
ては居ません。私の母も…。助けようとしても駄目なんで
す!!そこで有名な対魔士様に来ていただこうと読んだので
す」
「それで、その対魔士がなんだと?」
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火乃杜の問いに今度は男が口を開き、心配そうな顔言った。 「信用はしているんです。有名な対魔士様だし。ですが家の娘
を囮に…」
「囮?」
「そうです。狙われているのは娘です。だからそのまま娘を部
屋に一人置き、妖怪をおびき寄せると、そう仰っておりまし
た」
「まあ、そうだろうな。妖怪とて馬鹿ではない。ただの動かぬ
人形など置こうものならこの家は危ないだろう」
「…それはそうなのですが…私は娘が心配で…」
「いいだろう」
「は?」
火乃杜は自身に満ちた笑みで答えた。
「その囮役、私が変わってやろう」
「だ、駄目です!!!」
その言葉を聞くや否や娘は強く反論した。
「関係ないあなたを巻き込む訳には行きません!!」
「問題ない」
「問題大有りです!駄目です!」
必至になって反論する娘を見てどうしたものかと少しの間考えていたが、その口を開くとこう言った。
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