MONSTER 1
〜旅の始まり 鍵の解放〜
「紅夜ー!!」
勢いよく扉が開かれたかと思うと、少年が一人拳を握り締めたまま飛び込んできた。
「駄目です」
机に向かっていた紅夜は長い銀の髪を掻き揚げながらも振り返りもせずに言った。
「まだ何も言ってないだろ!?ってせめてこっち向いてしゃべ
れよ!!」
溜息を吐きながら椅子から立ち上がり少年の方へ歩いていくと、その額を人差し指と親指ではじく。
「いってー!何すんだ!?」
涙眼で講義する少年の額にもう一度人差し指を当てた。少年は反射的に目を瞑る。
「悠真、貴方のことです。どうせまた『遺産』でしょう?」
「うっ…」
悠真は開いた眼を泳がせながら言葉を詰まらせた。
「いい加減にしなさい。遺産は確かに便利ですが、副作用だっ
てあるんですよ。大体まだ懲りてないんですか?その身体、
誰のおかげで元に戻ったと思ってるんです?」
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「戻ってないもん。それにこれ副作用じゃないし」
その言葉に額に青筋を立てながらさらに語気を強めて紅夜は言う。
「そうですね、あなたが馬鹿なだけでしたね。と・に・か・
く!駄目なものは駄目です!!」
「だってトレジャーハンターだもんっ!」
「だったら遺産じゃなくて他のものにしなさい!宝は他にもあ
るでしょう」
「遺産が一番の宝なんだよ!それに今回は違うんだ!霊力が必
要なんだよ、紅夜一緒に行ってー」
服の裾を引っ張る悠真の手を放そうとするがなかなかその手は放れない。
「嫌です、何が特別ですか。それに私はこれから仕事があるん
ですから。放して下さい!」
「行ってくれるまで放さない!それに俺の話を聞けって!」
「聞きません!」
紅夜から引き剥がされそうになりながらも悠真は必至で言った。
「今回はあの天才季瑠が造った遺産なんだ!」
「何が季瑠ですか!?そんなの造ったのなんかどうでもいいで
すよ。大体特別の遺産なんてとっくに誰かに取られちゃって
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