黄昏の金色竜



 少女が素っ頓狂な声を上げるのと同時に、機体はガクンとバランスを崩し、孤を描きながら森の中へと突っ込んでいく。
「ぎゃああああああ」
 誰のものとも付かない叫び声があたりにこだました。
 飛行機は無数の枝、木々を折りながら次第に減速し、やがて地に激しく衝突し、地面をひどく抉りながらやがて大木に激突し停止する。 
 土煙に咳き込みながらケイはコックピットから這い出すと、後ろの席の少女に声をかけた。
「無事か?」
 少女は涙目になりながら中からずるずると出る。
「し、死ぬかと思った…」
 二人とも無傷だったのは奇跡だった。少女の言う通り死んでいてもおかしくない。
「やられた、フェスト、頼まれたってこういうことかよ」
「…これからどうするの?」
 ため息をついているケイに少女は触れようとし、彼はそれを避けるようにその場から飛びのいた。
「あっと、君、すごく嫌な感じがする。だから、触んないでほ
 しいんだけどってだから…」

 ケイは自分がとてもひどいことを言っているのに気づき、口ごもる。      

 少女は無表情のままもう一度聞き返した。
 ケイはあの牢で彼女に触れて以来、触ろうとしない、それに気づいていたのだろう。
「…燃料がなかったとはいえ、ここまでくれば追っ手は来ない
 し大丈夫だと思う。このまま北に向かえば町に出る。後は君
 の好きにするといい。やらなきゃならない事があるんだろ?
 町にはたくさんの情報がある。氷に閉じ込められた黒き竜、
 それの場所は誰にも知られていないんだ。あの人しか、だか
 らちょうどいいと思う。俺はこれから行くとこあるから」

 そういうとケイは北とは違うほうを向き歩いていこうとした時だった。
「ちょっと、無責任なんじゃない?」
 誰だよ!?思わずそう突っ込みを入れたくなるような強い口調に驚きながら振り返ると、目の前に腕を組み立っている少女の姿があった。
「え?」
 少女はそのまま人差し指をケイのほうへ突き出して堂々と言い放つ。
「乙女をこんなとこまで連れてきて置き去り?私をここまで連
 れてきた責任ってものがあるんじゃないかな?私違う世界か
 ら来て右も左も分からないんだけど?それから追われてるん

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