鎖に繋がれし者



               鎖に繋がれし者

 魔族を召喚したという店主がやっているどんな悩みも解決してくれる店がある。

「すみません」
 ドアを開けた先にある薄暗い部屋。なんだか嫌悪を抱くとも好感を抱くともなんともいえない匂いが立ち込めていた。周りには動物の剥製だの爬虫類のホルマリン漬けだの不気味なものばかり置いてある。
「あの〜」
 多少の恐怖感を抱きながら少年はその部屋へと足を踏み入れた。すると開けて置いた筈のドアが風もないのにバタンと言う音を立てながら勢い良くしまる。少年はその音にびっくりしながら硬直していた。
「いらっしゃい。怖がらなくてもいいのよ?」
 奥のほうから聞こえてきた女の人の声。奥を見ようと思うが回りの暗さでその声の主の顔までは見えなかった。その場に立ち、必至に見ようとしていると、
「そんなところに居ないでこっちにいらっしゃい。お兄さん」
 そう声がかかり、少年はおそるおそる近づいて行く。
 奥にはカウンターのようなものがあり、その向こう側には金

色の長い髪を結った妖艶な笑みの美女が座っていた。
「さあ、そこにお座りなさいな。貴方の悩み、聞きましょ
 う?」

 手の平を上側に向けながら指差された一つの椅子。少年は惹かれるようにその場所に腰を下ろした。
「さあ、話して御覧なさい」
 優しい笑顔を向けられ、少年は口を開き話し始めた。
「実は僕…気になってる子が居るんです。それで、その子に思
 いを伝えたくて、でも出来ないんです!!」

「……」
「貴方の魔力で何とかしていただけませんか!?」
 真面目に話す少年に向かって、美女はまた微笑みかけると思いっきり机を叩き立ち上がる。
「あほかー!!」
「え!?」
 今までの雰囲気とは全く違う美女の態度に少年は戸惑いながら口を開いて固まっていた。
「そんなん魔力で何とかできる訳ないでしょ!?」
「え!?でも…ここ悩み解決してくれる所なんじゃ…」
「知るか!?それは貴方の心次第でしょ!?自分で何とかでき
 るもんを他人に何とかしてもらうな!!お金いらないから帰
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