蒼と黒の雷光



                  蒼と黒の雷光

 この世界の人類は大きく二つに大別される。只人と亜人。
 今から約四年前、蝙蝠の亜人がこの世を恐怖のどん底に陥れた。
 奪い、殺し、支配する。
 只人は亜人全般を恐れ、そして約二年後、蝙蝠は一人の只人によって倒された。
 だが、只人の恐怖は解消されたが亜人の恐怖は続いた。
 只人からの迫害。
 弱きものは瀕死の生活を余儀なくされた。
 蝙蝠を倒した只人は、後も亜人を狩り続ける。
 黒い刀を持つ英雄、その者は後に只人達そう呼ばれたのだった。

「ドロボー!!」
 町の一角で威勢のよい怒りの声が炸裂した。
「ばーかっ。誰が捕まるかよっ」
 長いフランスパンを抱えた男の子が小馬鹿にしたように笑いながら走っている。
 歳は1011くらいだろうか。オレンジ色の髪、縦に裂けた瞳孔を持つ黄金色の瞳、毛の生えた尖った髪と同じ色の耳が頭の

上のほうに二つついている。
「誰かー!捕まえてくれっ!!」
 いつもの如く少年は朝食を手に入れた、そう思った。だが今回は違った。
 追いかけてくるパン屋の主人の方を見ながら走り、そして角を曲がると何かにぶつかり少年はしりもちをつく。
「って」
 少年が見あげるよりも早くぶつかった何者かにより首根っこをつかまれ身体が宙へと浮いていた。
「は、放せっ!!」
 少年を捕まえた大男、その腕の中でもがくが身体の小さい少年にとってそれは無意味な行動だった。それでも尚もがき続けたが、次の瞬間の一言で少年は動きをぴたりと止める。
「気味の悪い化け物が」
 町の誰かが発した声。その言葉が胸に突き刺さり、少年は只黙って唇をかみ締めた。
「どうも有難うございます」
 いつの間にやってきたのかパン屋の主人がその傍に居る。
 片手に刀のような物を持ち、冷酷な瞳をした黒ずくめの男は少年を地面へと投げ出した。
 激しく地面に叩きつけられたが、それでも少年はパンを放さ
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