蒼と黒の雷光



ずそして二人の男をにらみつけた。
「このクソガキッ!!毎回毎回物を盗みやがって!!亜人の分
 際で今日という今日は容赦しないぞ!!レオ」

 パン屋の主人は地面に転がったレオを激しく蹴り飛ばす。
「っ」
 レオは身体をくの字に曲げ、その痛みに耐えたが泣き声一つ出さず、只黙って主人を睨んでいた。
「なんだその眼は!?謝る事もできないのか?亜人って奴は」
 再び主人はレオの身体を蹴る。
 飛び交う罵声と子供への暴力にも限らず、回りのものは誰一人としてその行為を止めるものは居なかった。
 亜人がどのように扱われようと、彼らの知った事ではない。
 何か取り付かれたように、そして笑みさえも浮かべながら、パン屋の主人はレオに暴力を振るい続けた。
 レオを捕まえた男は全てを主人に任せたようにいつの間にかその場から姿を消している。
 レオがパンを持っている力をなくしかけた頃、
「ちょっと」
 そういって後ろからパン屋の主人の肩を何者かが掴んだ。
 振り返るとそこには一人の少女が立っていた。
 水色のパーカーに藍色の短パン、パーカーと同じ色の大き目の帽子を被った黒髪に黒い瞳の吊り眼の少女。

歳は178に見える。
「子供相手に大人気ないんじゃない?」
「何だお前、亜人の見方をするのか!?」
 主人は目くじらを立てて少女を睨みつけたが少女はその瞳に屈指もせず、寧ろ何事もないように、そして馬鹿馬鹿しそうに答えた。
「どうでもいいわよ、味方だの敵だのくだらない。パン代はあ
 たしが払うわ。それでいいでしょう?」

 主人は顔を真っ赤にし少女に何か言おうとしたが、少女は無理矢理主人の手の中に代金を押し込むと、パンを拾って地から身体を半分起こしたレオに向かってそれを差し出す。
「はい」
 しかしレオは差し出された手とパンを右手の甲で激しく払った。
 パンは無残にも地面にコロコロと転がる。
 少女は払われた手を擦りながら睨みつけるレオを無表情で見詰めた。
「只人なんかの施しなんか受けるかっ!!」
 そう怒鳴るとレオは素早く身を起こし、走り去ると町の奥へと姿を消す。
「…もったいないなあ」
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