200年目の鐘




 
 

 風のマスターは明らかに不快の色を表した表情でクロノスを睨みつけている。
 風の精霊は困ったような表情をして、主人の脇に立っていた。

 リラは一つ大きな溜息をつくと、その足をクロノスの方へと向けた。
 そして、自分より背の高い彼の顔を、その赤い瞳で覗き込み、静かに言う。
「少し、静にしていて貰えませんか?」
 別に睨んだ訳でも、凄んだ訳でもない。だがさっきまでの笑いはぴたりと止み、辺りは再び静寂さを取り戻していた。
 クロノスは逆らえなかった。その瞳に、その声に。
「悪かったよ」
 反省はしているものの、不満だ、と言う感情を露にし、彼は答えた。
 もう一度深い溜息を吐き、振り返った時、少年はもうそこに居た。満面の笑みで、リラを見つめている。そして口を開いた。
「我はぬしと契約する」
突然言われた事に、戸惑うリラ。
「あら、宜しいんですの?試練も無しに」
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