200年目の鐘



 睨みつけているユリアから視線を外し、ラウルの方を向き彼は言った。
「ラウル。ユリアとアリア、妹とその他の魂を解放して欲し
 い」

「解放だと!?馬鹿な!零体の私には触れられない。そして、 貴様を殺してくれる!!」
 ユリアがウィルに攻撃しようとした時だ。何かが彼女の背を切りつけた。
 身体を震わせながら振向いたその瞳に映ったのは見に不思議な光を纏ったラウルの姿だった。
「ラウ…ル…」
 切り裂かれた背から無数の光の玉が飛び出す。
「私の…力が…」
 それは天へと向かって、まるで光の、魂の河のように。
 その中に一つの懐かしいユリアととてもよく似た姿。目の前の霊体、茶色いウェーブのかかった長い髪、優しい笑顔。
「母…さん…?」
「マリア」
 それは一人、流れに逆らい、静にユリアを見下ろしていた。
 ユリアは手を伸ばした。
 その頬に自然と涙が伝う。
 そこにはもう、鬼のような顔はなかった。          


 
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