「マリア…やはり、お前には未来が見えていたのか?そこまで
力があるのに、何故…?」
マリアは答えずに真っ直ぐただユリアを見下ろし、そして消えて行く。
「マリア、お前がもし、神になっていたら…私はきっと…こん
な事は…しなかったのに…」
声だけを残すように、そして後を追うようにしてユリアは消えた。
光を纏った剣を降ろし、その様子を黙って見ていたラウルに時の神は言った。
「…ユリアはもともと支配を望んでいた訳ではなかった」
「?」
「これは復讐だ」
「復讐…」
(たしかリラもそんな事を…)
「ユリアは双子の妹、マリアにかなり執着していた。本当に仲
が良かった。マリアには力があった。誰も持っていない未来
を見る力。だから本当はマリアが神になるはずだった。だ
が、マリアは神になる事を拒み、森の外で出会った只人のお
前の父親と下へ、ユリアの元を去っていった。もしマリアが
神になっていれば、森の外に出て行くことはなかった。兄で
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あるこの私が居場所をなくし、そしてお前の父親がマリアを
マリアを奪った。そう考えて今回の行動に出たんだ。支配
し、全てを壊してやろうと…」
「……」
「私はもう、時の一族最後の生き残り。神の交代もなければ永
遠の休息も許されない。ある意味ユリアの復讐は遂げられた
のかもしれない」
「復讐…か」
ラウルはその言葉を、その意味を確かめるように呟く。
「俺、戻ります。皆きっと、待ってるから」
「ラウル!!」
走り去ろうとしたラウルを呼び止める。
「本来ならばお前を元の時代に返さなくてはならない。だが、
そうもいかなくなった」
「?」
「これから何が起ころうとも現実をしっかり受け止めろ。そう
しなければ決して前へは進めないから」
ラウルは頷く。
「それから、城へは私が送ってやろう。ここからかなり遠い
ぞ?」
「あ…」
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