200年目の鐘



「マリア…やはり、お前には未来が見えていたのか?そこまで
 力があるのに、何故…?」

 マリアは答えずに真っ直ぐただユリアを見下ろし、そして消えて行く。
「マリア、お前がもし、神になっていたら…私はきっと…こん
 な事は…しなかったのに…」

 声だけを残すように、そして後を追うようにしてユリアは消えた。

 光を纏った剣を降ろし、その様子を黙って見ていたラウルに時の神は言った。
「…ユリアはもともと支配を望んでいた訳ではなかった」
「?」
「これは復讐だ」
「復讐…」
(たしかリラもそんな事を…)
「ユリアは双子の妹、マリアにかなり執着していた。本当に仲
 が良かった。マリアには力があった。誰も持っていない未来
 を見る力。だから本当はマリアが神になるはずだった。だ
 が、マリアは神になる事を拒み、森の外で出会った只人のお
 前の父親と下へ、ユリアの元を去っていった。もしマリアが
 神になっていれば、森の外に出て行くことはなかった。兄で

 あるこの私が居場所をなくし、そしてお前の父親がマリアを
 マリアを奪った。そう考えて今回の行動に出たんだ。支配
 し、全てを壊してやろうと…」

「……」
「私はもう、時の一族最後の生き残り。神の交代もなければ永
 遠の休息も許されない。ある意味ユリアの復讐は遂げられた
 のかもしれない」

「復讐…か」
 ラウルはその言葉を、その意味を確かめるように呟く。
「俺、戻ります。皆きっと、待ってるから」
「ラウル!!」
 走り去ろうとしたラウルを呼び止める。
「本来ならばお前を元の時代に返さなくてはならない。だが、
 そうもいかなくなった」

「?」
「これから何が起ころうとも現実をしっかり受け止めろ。そう
 しなければ決して前へは進めないから」

 ラウルは頷く。
「それから、城へは私が送ってやろう。ここからかなり遠い
 ぞ?」

「あ…」
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