DEEP-SEA KING



それに気づき、あからさまに不審そうな表情で言った。
「何ですか?」
(私を必要と…ねえ)
「…お前が私を目覚めさせたのか?名前はなんと言う?」
「不本意ですがそうですよ。私の名は紅夜です」
 嫌そうにしていた割に名前もきちんと名乗った紅夜に火乃杜は満足気に微笑み言った。
「そうか…似ていないな」
「は?」
 訳も分からないと言った表情で火乃杜の顔を見てきたが、まあいいか、そう思った。
「私はもう行く」
「行くって何処へ」
 何処までも抜けている質問に火乃杜は再び馬鹿にしたように言った。
「さっき言った事をもう忘れたのか?深海の王の所だ」
「っ忘れていませんよ!」
 怒りながら講義する紅夜の言葉に耳を貸しもせず、火乃杜は身を翻す。そのとき紅夜の友と思われるものが彼女に声をかけた。
「俺達も蒼き王の所へ行くつもりなんだ。一緒に行かない
 か?」

 まさかそんな言葉をかけられるとは思わず一瞬驚いたが、まだ…、そう思い首を振るとゆっくりと彼らの方へ振り返る。
「私は人形。決して人と深く交わる事はない」
(そう、人となるその時まで、私は誰かを深く好きになる事は
 許されない…。人と一緒に居ればきっと情が移る事もあるだ
 ろう。それはきっと悲しくなる事だから…)

「そういえばお前、名前は?」
「俺?俺は悠真」
「・・・覚えておこう」
背を向けて去る火乃杜の表情は何処か寂しそうだった。

「さて、あの妖怪のおかげで霊力は少し戻ったがまだ足りない
 な。退治でもしながら行くとするか…」

 そう一人呟き村の外へ足を踏み入れると、暗い夜道の中を颯爽と歩いていく。
人となるため、深海の王を求めて…。





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