鎖に繋がれし者



 そう言うと正門の淵に足をかけ軽々とそれを飛び越えた。クリスがあっけに取られる間も無く小柄なリオまでも簡単に正門を乗り越え向こう側へと着地する。
「なんだレイ様なれてるじゃないですか。やっぱりやったんで
 しょ?」

「あなたと一緒にしないで欲しいわ」
 そして何事もなかったかのように他愛もない会話をしてい
た。クリスはほんの少しの間ぼうっとしていたが、すぐに我に変えると口の中で何か唱えふわりと宙に浮いてその門をクリアする。

「さて、中に入りますよ。夜は魔族の力は高まりますからクリ
 スさん、用意はいいですか?」

 魔力のなさそうな非力な少女に言われ、クリスは苦笑しながら答えた。
「一応ここの生徒ですから、大丈夫ですよ」
 それを聞くなり三人は正面玄関へ向かうとレイの唱えた魔法により鍵をそっと開け中に入っていく。
 中には原型のない白い霊体のようなものがふよふよと浮いていて、その数は数え切れない程のものだった。
「うわあ、召喚しすぎでしょう。なんですか、この数」
「それが…、ものすごい勢いで増えてるんですよ」
「この先、二階だわ」

 レイに案内されるがまま、二人がその後をついていった時。
「きゃっ」
「うわっ」
 背後から二人の悲鳴が聞こえ、レイが振向くと、二人が階段から落ちそうになっている光景が目に飛び込んできた。
 一つ溜息をつき、指をパチンと鳴らすと、二人の身体は中に浮いたように軽くなり、元の体制に戻る。
「気をつけなさい。この魔族たち、生徒を傷つけたのでしょ
 う?」

 そう言って再び階段を登っていった。
 クリスには魔族たちがレイだけを避けているように見える。
「この奥ね」
 彼女が指差した先にあったのは予想通りというか当たり前というか召喚術用の教室だった。
「開けるわよ」
 何のためらいもなく、勢い良くその扉を開けると、そこは普通の教室。
「何もないですねえ」
 リオは不思議そうに首をかしげていると、レイが奥の本棚の方へ迷いもせず歩いていき、それを右から左に向かって押し
た。棚はいとも簡単に動き、その場所には新たな入り口がぽっ

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