200年目の鐘



だった。それを信じず、足を踏み入れたものは決して帰っては来ない。そしていつしか誰も近づかなくなり、大人達は子供に近づくなときつく言って聞かせた。   
 しかし行くなと言われると、ますます行きたくなるのが子供だ。だから大人たちは在りもしない作り話まで作った。
 そんな所にまさか人が住んでいるなどと誰も思わないだろ
う。ましてや番人まで居たのはさすがに驚いた。立ち入る事ができるのは時の力を持った一族と、精霊王、マスターだけの
筈。
 では何故自分は生きているのだろうか。
 それを口にしようとした時、ドッグが先に口を開いた。
「何故自分が生きているのか、と疑問に思っているのだろ
 う?」

「…はい」
「ラウル、お前さんから精霊の守護を感じる」
「精霊の?でも俺、精霊の加護は受けていません」
 その言葉にドッグは眉を顰め、ラウルをじっと見つめた。

「その、上着のポケットだ」
「え?」
 何かを入れた覚えは無い。
 しかし、ポケットに手を入れてみると確かに何か硬くて輪の
ようなものが入っていた。それを掴み取り出す。その手の中に

は四つの窪みがある金細工の腕輪の様な物があった。
「お前さんを守っていたのはそれだ」
「これが?」
「それは王の証。代々王から王へ継承される物。約九百年前に
 消息を絶ったがこれには精霊の力が宿っていてな」

「ちょ、ちょっと待ってください。九百年前って一体。それに
 俺は王じゃない」
「…今は三千二百年」
「さ、三千二百年!?」
「ラウル、お前さんは時を渡ってきた。身に覚えはあるか?」
 ラウルは考えた。
 そしてある一つの出来事を鮮明に思い浮かべた。
「…あります」
 差し出された指、自分を包んだ眩い光、そしてそれを放った者。
「お前さんはこの世界の制度を知っているな?」
「はい。…地、水、火、風、四人の最も地位の高い精霊を司る
 王、そしてそれぞれの属性を持ったマスターと呼ばれるもの
 達が支えている世界。王はその秩序を三百年の間守るりそし
 て三百年ごとに王、マスター、精霊は変わる」
「そうだ、しかしここ九百年、王は変わっていない。外見こそ

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