200年目の鐘



「この子には嬉しいとか楽しいとか、そういった感情がない」
「え…?」
「この森で暮らしていたせいか悲しみや、苦しみの類しか持たずに育っ
 てしまった。そしてリラに新しい力があるのはこの森が精霊
 王の支配を受けないからだ」

「ああ、そうか。それなら」
「…私は」
 リラが再び口を開き、そしてラウルは彼女の方へと視線を戻した。
「私はこれから精霊石を集めに行かなくてはなりません。全て
 を元に戻す為に。人の魂を喰らい、支配を望む彼女をこのま
 まにしておく訳にはいきません。そしてラウル 、私と一緒
 に行きませんか?」

「俺が…君と?」
 その問いかけにリラは頷き、真っ直ぐとラウルを見つめて言った。
例え過去から来たとは言え、貴方もマリアを止めるつもりな のでしょう?」
「確かにそうだけど」
「私と共に行動していればマリアに必ず会えます。どうします か?」
 ラウルはマリアが何をしてきたのか、そしてその始まりを見
てきた。だから確かにこの申し出は有り難い。しばらく考えていたがラウルはリラと共に行くことに決め、頷いた。
「わかりました。ではまずは水の神殿に向かいます。ドッグ」
 リラの呼びかけにドッグは後ろの戸棚から一枚の紙を出す
と、それをテーブルの上に広げた。

 そこには時計回りに上から白、青、緑、赤、茶の建物が並んでいる。そしてその真ん中に森のようなものがあった。
 ドッグはその森を指して言った。
「此処が現在地、死の森だ」
 そう言って指を白い建物にずらす。
「そして此処が精霊王の城、マリアのいる所だ。しかしこのま
 ま乗り込んでいってもリラは掴まり、全てがマリアの手に堕
 ちる。だからまず…」

 それからドッグは時計回りに建物を指差していく。
「精霊の力を手に入れ、マスターを仲間にしなくてはならな
 い。まあ、これは王が必ずやることなのだが…。最初にこの
 青い建物、水の神殿に向かい水の精霊の力を手に入れる。そ
 れから時計回りに向かって最後に王の城へ行け」

「そう、行けばいいんですね」
「そうだ」
「事は一刻を争います。貴方が来たことでやっと動くことがで
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