る鳥めがけて、ラウルはそのまま剣を振り下ろす。その剣の切っ先は鳥の翼を掠めた。しかし、飛び散ったのは血ではなく、水。頭から水を被り、一瞬瞑った眼を半分開けて鳥を見た。確かに傷つけた筈の翼を、何事もなかったかの様に羽ばたかせて天井へと向かっていく様子が目に飛び込んでくる。
「あれは…水でできているのですね」
その言葉にラウルは振り返ると、鳥を見つめているリラに問いかけた。
「水でできた生き物なんて居るのか?」
リラはラウルの方へ視線を向けると首を振る。
「いいえ、あれは生き物ではありません。唯の水です。単に精
霊の力で動いているに過ぎません」
再び鳥に視線を戻し、同時にラウルも鳥を見た。
「しかし、液体をどうやって倒す?あれが居る限り、邪魔され
て先へは進めないんじゃないのか?」
ほんの少しの間、リラは口元に手を当てて考えていたが、抜かれたラウルの剣を見て口を開いた。
「それは、鉄でできているんですか?」
指差された剣を見て、不思議そうにラウルは答える。
「そうだけど?」
「その刃を、私の方へ向けて下さい」
「は?」 |
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突然何を言い出すのかと、聞き返すような表情でリラを見つめた。
「斬れ、と言っている訳ではありません」
「…分かった」
手を繋いでいるせいでかなり至近距離に居るので、ラウルは間違ってもリラを斬らないように慎重にその刃先を彼女へと向ける。
リラは目を細め、人差し指と中指の二本をその刃に押し当てると何かを口の中で呟いた。
その瞬間、刃は赤く染まり、同時に熱気がラウルを襲った。
「何を?」
「火の精霊に力を借りました。その刃は今、大変熱くなってい
ます。触らないで下さい」
「火?水に?」
「確かに火は水に弱いですけど、強くもありますから」
「はあ」
「試してみて下さい。来ますよ」
多少不満はあったものの、試してみるのも悪くはない。
ラウルは赤い刃の剣を向かってくる鳥に向けると、前を見据えてしっかりと構えた。
生きているものではないのに、その鳥は口を大きく開き、不
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