200年目の鐘



 ラウルの準備が終わるのを待って、リラは何事もなかったかのように歩き出した。もちろん手を繋いでいる訳だからラウルもその動きと共に歩きだす。
 あれほど何をしても開かず、硬く閉ざされた扉は、手を触れただけですんなり開いた。
「おう!熱いね、お二人さん」
 扉を開けるとまずその言葉が二人の耳へと入ってきた。
 
さっきの部屋と同じようなドーム上の天井、一瞬鏡かと疑う程ぴかぴかに磨かれた青い床。その中心に椅子が一つ置いてあり、そこに一人の男が座っている。男は二人の繋がれた手を見ながら冷やかすように言ってのけた。
「そうですか?水のせいでかなり冷え切ってると思いますけ
 ど?」

 冗談ではなく、真面目にその言葉を返し、リラは彼から手を離すとその人物の下へと歩み寄った。
「そういう意味じゃないんだけどなあ。…まあ、いっか」
 椅子に座った男は頭を右手で掻きながらそう呟いた。
 リラは男の前まで行くとその黒い瞳を見つめる。
「貴方は、水のマスターですか?」
「いかにも、俺が水のマスター、クロノス=クロト=ルシフェルさ」
 男はふざけた調子を全く崩さず、椅子の肘掛に肘をつき、

 
   
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