200年目の鐘



その手の甲に頬を乗せながら名乗った。
「私はリラと申します。それで…?」
男はにやりと笑う。
「まあ、あんたは合格だな。倒れた時の力のコントロールは完
 璧だった。まあ、最後のは目を瞑ったとしても、だ」

「ボクも認めるよ」
 椅子の背後から突如可愛らしい少女が姿を現す。その青く透き通った髪を見て、リラは理解した。
「水の…精霊さんですね?」
「そ。ボクはリノ。宜しくね、リラ」
「宜しくお願いします。リノ」
「まあ、リノもこう言ってる事だし、俺はあんたと契約するつ
 もりだ」

「有難うございます」
「ところでリラ。あれはなんのマスターだ?」
「…俺は、マスターじゃない」
 あれと呼ばれた事に多少不満を感じながらもラウルは答え
た。

「彼は、この戦いの最も重要な鍵となる人物です」
「最も重要な、ね」
 クロノスはじろりとラウルを上から下まで見回す。
 だが、しばらくすると彼は自分が問いかけた事にも関わらず、

ま、いっか、
 と対して興味なさげに納得すると、リラの方へ向き直った。
「それより」
 クロノスはにっこり笑いながらリラの手をとり言う。
「正式な名前を教えてくれないかなあ?王サマ?」
「分かっています」
「正式?」
(『リラ』とは本名ではないのか?)
 ラウルはその会話を聞いて不思議そうに問い返した。
 クロノスは答える。
「正式というのは、上から下まで、すべての名の事。それがな
 ければ契約できない。名とはとても大事な物だ。それは人を
 縛る。だから、俺の様に精霊を扱える者、呪術師、など、そ
 れを知る者には無闇やたらに教えるものじゃない。また、疑
 わしい不審な人物にもな。まあ、そういう事だ」

「あれ?」
ラウルは考えた。
 では何故、リラはいきなり正式な名前を名乗ったのか、を。自分はリラにとって疑わしい人間だった筈だ。
(そういえば…)
そういえば彼女は初めて会った時、自分の事を知っていた。確かに、『お

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