その手の甲に頬を乗せながら名乗った。
「私はリラと申します。それで…?」
男はにやりと笑う。
「まあ、あんたは合格だな。倒れた時の力のコントロールは完
璧だった。まあ、最後のは目を瞑ったとしても、だ」
「ボクも認めるよ」
椅子の背後から突如可愛らしい少女が姿を現す。その青く透き通った髪を見て、リラは理解した。
「水の…精霊さんですね?」
「そ。ボクはリノ。宜しくね、リラ」
「宜しくお願いします。リノ」
「まあ、リノもこう言ってる事だし、俺はあんたと契約するつ
もりだ」
「有難うございます」
「ところでリラ。あれはなんのマスターだ?」
「…俺は、マスターじゃない」
あれと呼ばれた事に多少不満を感じながらもラウルは答え
た。
「彼は、この戦いの最も重要な鍵となる人物です」
「最も重要な、ね」
クロノスはじろりとラウルを上から下まで見回す。
だが、しばらくすると彼は自分が問いかけた事にも関わらず、 |
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ま、いっか、
と対して興味なさげに納得すると、リラの方へ向き直った。
「それより」
クロノスはにっこり笑いながらリラの手をとり言う。
「正式な名前を教えてくれないかなあ?王サマ?」
「分かっています」
「正式?」
(『リラ』とは本名ではないのか?)
ラウルはその会話を聞いて不思議そうに問い返した。
クロノスは答える。
「正式というのは、上から下まで、すべての名の事。それがな
ければ契約できない。名とはとても大事な物だ。それは人を
縛る。だから、俺の様に精霊を扱える者、呪術師、など、そ
れを知る者には無闇やたらに教えるものじゃない。また、疑
わしい不審な人物にもな。まあ、そういう事だ」
「あれ?」
ラウルは考えた。
では何故、リラはいきなり正式な名前を名乗ったのか、を。自分はリラにとって疑わしい人間だった筈だ。
(そういえば…)
そういえば彼女は初めて会った時、自分の事を知っていた。確かに、『お
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