200年目の鐘



セレナは足の裏を二、三度リズム良く打ち鳴らす。風が不
思議な音を立てて辺りに響いた。そして、淵が緑色の光を発し始め、その直後、彼女はその手を軽く文様の上についた。

 しかし何も起こらなかった。
 さっきと居場所も全く変わらない。セレナは首を傾げ、再び同じ動作を繰り返したが、やっぱり何も起きはしなかった。
「おかしいですわね」
「火の神殿に何かあったのかな?」
「分かりませんわ。でもこの装置であそこまで行くのは無理そ
 うですわね」

 二人の会話を聞きながら、リラは深い溜息を吐くと言った。
「仕方ありません。歩いて向かいましょう」
 なんだか溜息ばかり吐いているような気がする。彼女はそう感じながらも他の者の意見を待った。
「歩くって言っても何日かかるか分からないぞ?時間は大丈夫
 なのか」

「だからといって留まっている訳には行かないでしょう?此処
 で回復を待つよりましです」

「待て」
「?」
 二人のやり取りを聞いていたリュウキが突然口を開いた。
「もしかしたら、此処から歩く事もないかもしれん。セレナ、

 地獄の谷までは行けるか?」
「試してみますわ」

 そう言うと彼女は何かを口の中で呟いた。風が舞い、それを手の中に集める。思いっきり凝縮した風を、セレナは文様へと叩きつけた。
 激しい風が吹きつけ、一度目を閉じ、開くと、マグマの中に立っていた。
「暑い」
 誰かがそう呟き、ラウルも額の汗を拭った。
「どうやら上手くいったようですわね」
「ああ、だが…地獄とは良く言ったものだな」
「俺も、此処には一度も来た事なかったけど、まさかこういう
 所だったとはねえ」

「マスターの試練そっくりだね」
「ばーか、俺のが可愛げあっただろ?なんせ唯の水!」
「ぬしに可愛さも何もあったものか」
「何!俺の何処が可愛くないんだよ」
「はあ、気づいてもおらんとは、救いようがないな」
「やーねー、嫉妬しちゃって」
「何だと?何に対しての嫉妬だ?」
「大丈夫、お前も可愛いよ、小っちゃくて」
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