200年目の鐘



「はい?」
「…勝てるの?」
「…勝つしか…ないんですよ」
 率直に自分の疑問をぶつけてみたが、当然の言葉が帰ってきてラウルは軽く笑った。

 リラとモーガリスを残し、彼らは全員フィールドの外へ出
る。

お互いが両端に着いた所でグリスがピーっと指笛を吹いた。
「おっりゃあああ」
 奇声をあげ、右手を握り締め開いた左手に胸の前で打ちつけたかと思うと、モーガリスはその拳で地面をついた。
「!」
 リラは何かに気づいたように右手の人差し指と中指の二本を振り下ろす。
 地面から突然盛り上がってきた泥の塊を、炎の熱で一気に分散すると、モーガリスに向かって走り出した。
 一方モーガリスは勝ち誇った笑みを浮かべながらその場を動かず手を前へ突き出す。
 今度は横から、前から後ろからと四方八方から蛇の形をした岩が突き出しリラのほうへ突撃してきた。
「「「「リラ!?」」」

周りで見ている彼らには一瞬彼女が岩に押しつぶされたように見えた。が、叫んだその時岩は内側から大量の水迸らせ泥と化しその場に崩れ落る。
 中からは泥を頭から被ったリラが立っていた。肩で息をつきながらもその赤い瞳は一瞬恐怖を感じさせるくらいにしっかりと正面を見据えている。
 二人の戦う姿を見ながら四人は深く息をついた。
「ったく殺す気かよ、モーガリスは」
「一瞬ドキッとしたよ〜」
「これだから戦闘馬鹿はこまるな」
「戦闘馬鹿で破壊神…か」
 心配しながらもラウルは余計な事にこだわっているようだった。
「でも、リラはすごいな」
見ながらリュウキは静かに言う。
「…そうだね。あまり精霊の力で戦った事ってないんじゃない
 かな?」

「死の森にいたらしいしな」
「やるしかない…か」
 その言葉の意味を自分と重ねながら、ラウルは静に、誰にも聞こえないくらい静に呟いた。
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