200年目の鐘



 その瞳には怒りとも悲しみともつかぬものが映っていた。
 唇震わせ、そして言う。
「マリアは、違う」
「認めたくないかもしれない。でも、母さんは…」
 ルーン王は表情を柔らげ、首を振った。
「そうではないのよ、ラウル。…貴方はまだ、真実を知らない
 のね?」

「真実…?」
 眼を細め聞き返すと、彼女は再び真剣な表情となって頷い
く。

「そう、あれはマリアではないの。彼女は、マリアの双子の
 姉、ユリアよ」

「でも…」
「そう、彼女の死体はあった。彼女は、時の一族の魂をその魂
 に取り込み、そして肉体を捨てた。マリアの身体を、私に近
 づきやすい身体を得るために」

「それじゃあ、母さんがいきなり変わったのは…」
「別人だからよ。彼女は貴方を恐れマリアとして生きている」
「俺を、恐れている?」
「ええ」
「でも、だったら何故殺さない?あの時も、そして未来でさ
 え」

「未来…まだ、ユリアは生きているの!?」
 ラウルは黙って頷いた。
「時期精霊王となる子と、精霊達と一緒に城へ乗り込んで確認
 した。間違いない」

「…だとしたらここで話をしている場合ではないわね。ラウ
 ル、貴方の上着のポケット」

 言われて手を入れると、知っている感触がそこにある。
 取り出すと、その手の中には精霊石のはまった腕輪があっ
た。

「いつの間に!?」
 ラウルは再び気づかなかった自分がなんだか情けない気がした。
「強いのね、その時代の王は」
「え?」
「敵の中にいながら腕輪だけではなく精霊石まで手放してしま
 うなんて」

「どういう…?」
「石を手放せば戦力が落ちる。今の王、いいえ、ユリアには勝
 てないと言うこと。信じているのね、貴方が戻ってくるこ
 と」

「…え」
 
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