その瞳には怒りとも悲しみともつかぬものが映っていた。
唇震わせ、そして言う。
「マリアは、違う」
「認めたくないかもしれない。でも、母さんは…」
ルーン王は表情を柔らげ、首を振った。
「そうではないのよ、ラウル。…貴方はまだ、真実を知らない
のね?」
「真実…?」
眼を細め聞き返すと、彼女は再び真剣な表情となって頷い
く。
「そう、あれはマリアではないの。彼女は、マリアの双子の
姉、ユリアよ」
「でも…」
「そう、彼女の死体はあった。彼女は、時の一族の魂をその魂
に取り込み、そして肉体を捨てた。マリアの身体を、私に近
づきやすい身体を得るために」
「それじゃあ、母さんがいきなり変わったのは…」
「別人だからよ。彼女は貴方を恐れマリアとして生きている」
「俺を、恐れている?」
「ええ」
「でも、だったら何故殺さない?あの時も、そして未来でさ
え」
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「未来…まだ、ユリアは生きているの!?」
ラウルは黙って頷いた。
「時期精霊王となる子と、精霊達と一緒に城へ乗り込んで確認
した。間違いない」
「…だとしたらここで話をしている場合ではないわね。ラウ
ル、貴方の上着のポケット」
言われて手を入れると、知っている感触がそこにある。
取り出すと、その手の中には精霊石のはまった腕輪があっ
た。
「いつの間に!?」
ラウルは再び気づかなかった自分がなんだか情けない気がした。
「強いのね、その時代の王は」
「え?」
「敵の中にいながら腕輪だけではなく精霊石まで手放してしま
うなんて」
「どういう…?」
「石を手放せば戦力が落ちる。今の王、いいえ、ユリアには勝
てないと言うこと。信じているのね、貴方が戻ってくるこ
と」
「…え」
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