「信じてくれてる人が待ってるから」
「信じてくれている者、か。私には責任が果たせなかった。一
族を守る事も。本当にマリアに似ているな」
「母さん…?」
ウェンは首を振ると杖を振りかざした。
「いや、さて、汝らの帰る場所。何処を望む?」
その問いに、一同は声を揃えて答える。
『リラの元へ』
杖は目が潰れてしまうほどの光を放った。
かなり乱暴に放り出され、何処かの床に落とされる、そう思ったがなんだか柔らかいもの上に身体は乗っている。また、腰から降り立つと同時に、
「ぐえっ」
などと蛙の潰れるような声が聞こえた。
見れば下には折り重なるようにして全員が下敷きになっている。
「はあ〜、助かった〜」
ラウルがそう呟くと、
「助かってなーい!何であたしがいっつも一番下なのよ!!ど
いてよちょっと!!重い!!」
「きゃあ、マスター」
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キーラが叫び、八人がその上からどいた。
「リラ!?」
誰かが叫んだ。
檻の鉄格子の向こう、そこに血にまみれたリラが壁にもたれかかり座っている。
「…」
重たげに瞳を開け、そして彼らの方を見るとその手をだるそうに差し出した。
「腕輪を…」
「ラウル、腕輪だ」
「ああ」
ラウルは腕輪をリュウキに渡し、そしてリュウキはリラのところに駆け寄ると檻の隙間から細い腕を出して彼女に手渡す。
その時だった。
檻は砂のように砕け散り、そして、血が床に落ちた。
「リ…ラ…?」
その腹には彼女の短剣が深々と刺さっている。
不適に笑うと姿を消した。
「リュウキ様!?」
崩れ落ちるその身体を抱きとめ、セレナは涙眼でリノのほうを向くと言う。
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