200年目の鐘



「リノ、早く回復を!!」
「う、うん!!」
 何が起こったのかわからなかった。
「何でリラが、リュウキを?」
 先ほどの笑った顔、血と赤い瞳が混じり、それはまるで悪魔のような不気味な顔。
(違う)
 ラウルは心の中で呟いた。見覚えのある笑顔。
(彼女が望んだのはあの顔じゃない。あれは…)
「あれはリラじゃない!」
 そう叫ぶと急に何も言わず走り出した。
「ちょっと!?ラウ君!?」
 ミレルが呼び止めるのも気にせずに、階段を駆け上がり、そして扉を開け放つ。
 協会のようなステンドグラス。ドームのように高い天井。赤い金縁の垂れ幕。白い柱に白い壁。
 神聖な場所のように思えるその部屋の祭壇の前に彼女は立っていた。
 その上の五方星に、あの地図と同じように精霊石が置かれ、王の城の位置にはあの腕輪がある。
 リラは自らの手を短剣で切り裂くとその星の中央に手を突いた。

 七色の光と共に、それは一つの不思議な色をした石と化す。
「ユリア!!」
 ラウルは叫んだ。
 リラは彼の方を睨むように見詰め、そして笑った。
「ラウル、か。ククッ。いいだろう。この石の力、お前で試し
 てくれる」

「何!?」
「精霊のついていないお前に相殺する事はできまい。尤も精霊
 がついていたところで統合されたこの石の力には敵わんだろ
 うがなあ」

 そういってリラは石を持った左手を突き出し何か唱えようとした時だった。
「な、なんだ…?身体が…」
 まるで金縛りにあった様に身体が動かない。
そして、
 彼女の右手はゆっくりと上に上げた。短剣を持ったその手を…。
「や、やめろっ」
「リラ!?」
 様子のおかしさにラウルが叫ぶと同時にその手は彼女の胸へと振り下ろされた。
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