200年目の鐘



は居た。
 それはリュウキ派と呼ばれる一味だ。
 
 意外にも小さいリュウキのファンは多い。

 中身はまあそれなりの年齢なのだが、彼女たちにとってはかわいい弟のようなものでもあるらしい。
「小さいは小さいで、まあ、得だな」
 彼はそう呟くと、次のターゲットを目指して颯爽と廊下を歩いてた。

 一方リュウキもクロノスと同じような手段をとっていた。
 侍女のところへ回っては、
「すまんが今勝負をしていてな、絶対にまけたくないのだ。我
 が勝つために協力してはもらえぬか?」

 と、なんともかわいらしい姿で懇願している。
 侍女たちは、可愛い、とはやしたて、自分用にとっておいたおやつなどを彼に渡すのだった。
(絶対負けるわけには行かぬ、今はどんなに恥ずかしくても!
 クロノスに絶対勝つ!)

 彼は勝負を始めるきっかけとなった、クロノスの、
「お前が勝ったら小さいと馬鹿にしないでやるよ」
 という言葉を再び脳裏に蘇らせ、外見静かに、内面激しく闘志をもやしていた。


「わしが一番不利なのではないかと思うんじゃよ」
「まあ、モーガリスは外見からしてもでないがらなあ。おらが
 あげたのだけじゃあ、まあ勝てねえだろうなあ」

 食堂でグリスと向き合いながら彼らは深いため息をつく。
 城中巡っても何一つ貰うことはできなかった。
「モーガリス様、どうかなさいました?」
 厨房の奥から出てきた中年の女性は肩を落としている彼に話しかける。
「んあ?ああ、マームさんか。実はな、王とマスターとで勝負
 してるんじゃよ…」

 マームさんというのは厨房のマザーで、城の食事の管理人
だ。

 彼女はモーガリスから事情を聞くと、胸をどーんと叩いて言い放つ。
「あたしに任しといてください。いつも料理では世話になって
 るモーガリス様の為だ、厨房のやからに言っといてあげます
 よ。ちょっと待っていてくださいね」

 そう言っておくに引っ込む。
 実はモーガリス、意外にも料理が得意で厨房の連中からは篤い信頼をもたれていた。 
               前へ   閉じる  次へ