DEEP-SEA KING



「これは…」
 紅夜は驚き近づいていく。目の前には巨大な氷が広がっていた、そして中には一人の少女が安らかな顔で眠っているのだった。

「し、死んでるのか?」
悠真はゆっくりとその氷に近づいていく。
「わかりません。でも村の騒ぎはこれの所為ではないようです
 ね。強力に封印されています」

 そう言って氷に手をついた瞬間、そこから皹が広がり激しい音を立ててそれは砕け散った。
「うわっ」
 中に入っていた少女は氷という支えを失い、紅夜の上へと落ちた。
「ぎゃっ紅夜!!何封印解いてんだよ!!」
「わ、私じゃありません!!」
 そう叫んだ紅夜の上で、少女はゆっくりと眼を開けると身体を起こす。
「う、動いた!!」
「生きて…いる…?」
 少女は少しの間焦点の合わない眼で驚いている紅夜を見詰めていた。
「…季…瑠…?」

 そして、そう呟くとその場に倒れこんだ。
「…?」

「季瑠ってあの季瑠か?」
少女の顔を覗き込みながら悠真が言う。
「解りません…、とにかく此処を出ましょう。とりあえずこの
 人は今回の件と関係がないことは確かですから」

 洞窟を出ると男は驚いた様子で色々と聞いてきたが、話は帰ってからするという事で取り合えず彼の家へと戻る事にした。
 少女を布団へと寝かせてから居間に戻ると紅夜はさっきでの出来事を語った。
「ではあの方が洞窟の中に封印されていた者なのですか?」
「そう、紅夜が封印といちゃったんだけどな」
「こ、紅夜様!?」
「…大丈夫です。あの人は今回は関係ないので安心して下さ
 い」

「はあ、では一体妖怪は何処に…?」
「それは解りませんが、大丈夫です。あなたの娘さんはちゃん
 とお守りしますから」

「本当にお願いします」
心配そうにしている村人の肩を叩き、紅夜は微笑み言う。
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