「任せて下さい」
夜になり、二人は娘の寝ている隣の部屋に身を隠し、じっと待っていた。
「なあ、紅夜。大丈夫か?失敗したりしないのか?」
「何がです?」
「うっかりあの娘が食われるとか」
「…大丈夫ですよ」
「でも何も本物を囮に使わなくたって…むぐっ」
嫌な気配を感じ、言いかけた悠真の口を塞ぐ。襖から覗く
と、何処からともなく妖怪は現れ、寝ている娘から少し離れた足元に立っていた。頭には二本の角、口から伸びた二本の牙は鋭く尖っている。
紅夜が出ようとした時だった。寝ていたはずの娘が起き上がり、妖怪の方へと歩み寄っていった。
「なっ」
紅夜が慌てて飛びだすと、妖怪は娘の首筋にがぶりと噛みついた。
「冗談でしょう!?」
まさか。そんな気持が身体を支配し背筋を冷たいものが流れ落ちる。
「ど、どうすんだよ!!大丈夫言ったじゃん!?」 |
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悠真はおろおろと紅夜に問いかけた。
「と、とにかく」
とにかく倒さなければ、そう思って懐に手を突っ込んだ瞬
間、奇怪な悲鳴が部屋いっぱいに響いた。
「!」
「な、何だ!?」
驚く二人の目の前で妖怪は砂のように崩れ去る。
噛まれたはずの娘は笑いながら何事もなかったの用に二人の方を振り返った。
「あ、貴女は!?」
その娘はあの男の娘ではなかった。
先ほど紅夜が封印を解き、洞窟の中から連れ出した少女。
「残念だったな、無能な対魔士殿」
「む、無能!?」
無能と言われて睨みつけたが少女は馬鹿にしたような笑みを崩さずに言った。
「違うというのか?」
「確かに無能かも」
同意して頷いている悠真を張り倒し、紅夜は睨んだまま問いかけた。
「貴女、何者ですか?」
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