黄昏の金色竜



                第一話
                   〜夕焼けの少女〜

 あちこちから悲鳴が聞こえていた。ひとつの村がたくさんの魔物に襲撃されている。家々からは火の手が上がり、人々は逃げまとい魔物は人を襲いながらも家畜の肉を貪っていた。血なまぐさいにおいが立ち込め、そこは戦場と化している。
「くそっ」
 剣で魔物をなぎ払いながら細身の少年は悪態をついた。深い森色の瞳は怒りをたたえ、太陽色の金の髪は魔物の血で赤く染まり、額にピタリと張り付いている。
「落ち着けよ、ケイ」
 そばにいたもう一人の少年は宥めるようにケイと呼んだ少年に言った。この少年はケイよりも体つきが土色の髪に琥珀色の目を持っている。
「そうは言うけど、最近魔物の動きが活発になりすぎてる。お
 かしいだろ、どう考えても。これじゃきりがない。いくら村
 の結界が街に比べて弱いからといって今まで突破してきたこ
 となんてなかった。これじゃ村が全滅する!」

 戦闘の疲れと苛立たちさで思わず声を荒げた。
「そう怒るなって。これも全部あの竜が来たから起こってるん
 だろうな…。村がつぶれるのは食料問題にも関わるからち
 ゃんと考えなきゃいけないが、今は村人を非難させるのが先
 だろ。今は任務遂行することだけ考えろ。対策は政府が考え
 るさ。あの方を信じろって」

「それは分かってるけど…」
 言いかけたところで突然若い女の叫び声がすぐ近くから聞こえてくる。
「!?フェストここ頼む!」
「え!?あ、おいケイ!!」
 フェストが呼びかけるよりも早くケイは走り出していた。彼は伸ばしかけた手を持て余し、ため息をつくとまた魔物のほうへ向き直りにやりと笑う。
「ま、外見はわからんが乙女のピンチっていや仕方ないか。お
 い、お前ら俺が遊んでやるからかかかってこいよ」

 ケイたちがいたすぐ近くの建物の影に彼女はいた。頭からマントをかぶり、迫り来る魔物の方を向き、後じさりながら。ケイはその様子を見るなりすぐさま剣を振り上げて魔物の首筋を切り裂いた。魔物はぴくぴくと痙攣しながらその場に崩れ落ちる。
「っ」
 その光景に少女は両手を口に当てながら立ち尽くしていた。

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