黄昏の金色竜



「大丈夫ですか?」
 ケイは立ち尽くす少女に向かって極力怖がらせないように丁寧に話しかける。自分の今の外見もちまみれでかなり不気味なものだったからだ。
「あ、ありがとう…」
 少女は震える声でそういうと背中を向けて立ち去ろうとす
る。

「ちょっと何処へ」
「あ」
 ケイがマントを掴むのと、少女の立ち去る勢いとで頭からかぶっていたそれは彼女の頭や肩から外れケイの手の中に残っ
た。

 その瞬間少女の夕日色の髪がその虚空に散る。見たこともない見事な色のケイは一瞬心を奪われていたが、少女が声をかけるとはっと我に帰り続けた。少女はまた見たこともないような服装をしていたのでこの辺の者でないことはケイにも容易に予測できる。
「えっと、君この辺の子じゃないよね?どうしてここにいるの
 か知らないけど今此処は危険だ。向こうへ行けば政府が保護
 してくれる」
 指差した方向を少女はつられるように視線を這わせまたそのみかん色の瞳をケイへと向けた。

「危険…あなたは行かないの?」
 ケイは笑うと少女の頭に彼女が最初かぶっていたマントをかぶせ、
「俺は政府の人間だから、ここの人を逃がすのが仕事。じゃ
 な、気をつけろよ」

 そういって走り去る。
 少女は何かを言いかけたが、ケイが走り去ってしまうのを見るとその唇を閉じ彼が指し示した方向へと走っていった。

 魔物を倒し終わり、彼らは政府本部へと戻っていた。
 本部のロビーでは家を失い、怪我をした村人たちが看護班の手当てを受けながらうずくまっている。ただをの瞳を虚ろに床に向けているものもいれば、恐怖に叫んでいるものもいた。
「はあ。一体なんだって魔物なんか…」
 その状況を横目で見ながらケイは大きなため息をつき手のひらをその額に押し当てる。
 独り言のように呟かれたその言葉にフェストはまたか、といった表情で答えた。
「確かに異常だな。でもまあ村人は全員無事だったんだ。色々
 と気にはなるが調べるのは上の仕事。村人の介護は救護班の 仕事。村復活に貢献するのは政府の資産。俺たちの役目は終

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