わったの」
「まあ、そうなんだけどさあ」
「それより早く部屋に戻ろうぜ。血、べとべとで気持ち悪い」
「ったくお前は…少しは…?」
今度は別の意味でため息をつき、言いかけた言葉を遮るようにロビーはざわざわと不振そうな声が広がる。
周りを見ると政府の戦闘員達の視線が保護された村人たちの方へ注がれていた。
二人がゆっくりと視線を向けたその視線の先には先ほどケイが助けた夕日色の髪の少女が政府の警備兵に連れて行かれようとする姿がある。
「なっ」
「ケイ?」
思わず歩き出しかけた足を止めたのはそっと囁かれた仲間の言葉だった。
「あの子、竜の神子らしいよ」
「竜の神子?何、それ」
「さあ、詳しくは判んないけど。あの方がそう言っているらし
い」
「うーん、それってとりあえず悪いもの?」
「竜のって言うんだからそうなんじゃないか?」
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「竜の…神子?」
手錠をかけられ、二人の間を歩く少女はふとケイに視線を向ける。
その髪と同じ色の瞳をケイの視線も捕らえた瞬間、すべての音が消えた。
何か違う空間にでも来てしまったかのように。
「イ…ケイ?おい!ケイ!!」
「え?」
がしりと肩をつかまれ、ケイはふと我に帰る。
少女の姿はもうそこにはなかった。
「え?じゃねえよ。お前いきなり意識飛んでたぞ!?」
「…あ…ああ…何でもない」
――今の…一体。
「ったく」
繭を上げ呆れた表情を向けたフェストは次の瞬間からかうような笑みを浮かべケイの方をぽんっと叩き、二回ほどうなず
く。
「何んだよ、気持ち悪い」
ケイは嫌そうな顔を向け聞き返した。
「一目ぼれだろ。でも相手は犯罪者。悲しいよな。うん」
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