黄昏の金色竜



「は?」
「彼女の為にあの方に抗議してみたらどうだ?」
「違うって。あの子助けたんだよ。ほら、あの時」
「あの時?…ああ、お前が暴走したときか」
「変な言い方するな!…もういい!」
「いてっ」
 フェストの頭を思い切り殴るとケイは居住区へと続くエレベーターの方へすたすたと歩いていく。
「だあ、短気だなあ。冗談だろ」
 後を追ってくるフェストを無視しケイはエレベーターのドアを閉め、居住区へのボタンを無造作に押すとその壁に寄りかかった。
――竜の神子、気になるな。それが何なのかは知らないけど、
  その言葉、聞いたことがあるような気がする。…あの人は
  何か知っているようだったし。後で聞きに行ってみるか。


 部屋でシャワーを浴び、私服に着替えるとケイは政府の最高責任者の部屋へと向う。
 この階へ来ることができる者はあまりいない。だが親のいないケイとフェストはこの政府の責任者に育てられ兄弟の様に育った。つまり責任者は二人の親のようなもので、二人は特別にこの階へ来ることを許されていた。      

 一つ上の階へあがり、赤い絨毯が敷き詰められた廊下を歩
く。廊下の両サイドの壁には立派ながくに飾られた絵がいくつもかかっていた。

 戦闘員となってからこの階へは足を踏み入れてはいないケイは、少し緊張しながらもその廊下を進んでいく。
 やがて少し広いホールのような所に出る。
 その正面には二本の柱に囲まれた木彫りの立派なドアが存在感を誇示して壁に埋まっていた。
 ケイはその前に立ち大きく息を吸い込むとノックをしようと手を上げる。
 その時だった。
「何故私の、神子の事を知っているの?」
 戦場で聞いたあの少女の声が扉の向こうから聞こえてくる。
「知っているさ、古からな」
「何?」
「まあ、そんなことはどうでもいい」
 彼はククッと笑いながら続けた。
「私がこの組織を作ったのは強きものを集めその中に竜を見出
 すだめ。そしてこの政府の人間という駒を使って神子を探す
 ためだ」

「竜も神子も住む空間が違うわ。何を根拠に」
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