黄昏の金色竜



「一匹でも竜が来れば、お前たちが探しに来ることは分かって
 いた。お前たちは我々の世界との接触を好まないからな」

「あなた、まさか…」
「そう、私が呼び寄せたのだよ。黒き竜を」
――何だって!?
 ケイはその場に立ち尽くた。
「馬鹿な、そんなこと、できる筈が」
「分からないのか?まあいい案の定、神子は現れた。竜の力を
 支配出来る神子の力。私はその力を手に入れる。神子の力を
 手に入れることは即ち、竜の力を手に入れるも同じこと」

 少女は繭を潜める。
「竜は破壊の神。こんな組織のトップとてたかが知れている。
 神の力さえ手に入れば、私はすべてを支配できるのだ。恐怖
 と言う名の下にな」

「愚かな」
「まずはお前の力で…」
「つっ」
 男はふと笑うと少女の手首を掴み力任せに引いた。
「白き竜か…?」
 少女は答えず殺気に満ちた瞳で男をにらみつける。
「では…誰だ!?」
 男は叫ぶと扉を勢いよく開けた。しかしそこには何者の姿も 

なく、気のせいかと部屋に戻ろうとしたところで足元に落ちている何かに気づいた。
 それを拾い上げると男はにやりと笑いつぶやく。
「ケイ・ロードリー…」
 
 ケイは急いで自室へと駆け込んだ。
「い、今の話は一体」
 息を切らし、机の上に両の手を付く。
――俺たちは、利用されていた?政府は竜と神子のための駒?
  このすべての元凶があの人…?

 訳が分からなかった。
 だが、あの言葉は噂話でも他人から聞いた話でもない。その耳で、彼の口から聞いたものだった。
 おそらく真実なのだろう。
 いきなり部屋のドアがドンドンと叩かれた。
 ケイは一瞬びくりと反応したが、扉のほうへ歩み寄る。
「ケイ?起きてるかー?」
 飛び込んできたあまりに能天気な声にケイは内心ホッとしながら戸をあけた。
「何だよ、お前。間抜けな顔してるぞ?」
「ほっとけ」
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