いつもはむかつく台詞だが、その日常会話が今は有難い。
「で、何?」
「いや、なんか警備の奴がさ」
ホッとしたのも束の間、その言葉と視線の先に現れた紺色の制服に身を包んだ警備員の姿にケイは言葉をなくした。
「今日のことでお前と、話したいんだって。ほらお前があの子
とはじめに会った政府の人間だろ?だからじゃないか?」
「ケイ・ロードリー、我々と来てもらおう」
硬い石畳、鼻につんとくるかび臭い匂い。どこからか漏れている水の音、そのせいかは分からないが湿り気を帯びた鬱陶しい空気。薄暗い空間。そして目の前に黒く嵌る鉄の棒。
「最低」
牢の中で壁にもたれながらケイはポツリと呟いた。
――聞いてたのばれてたのか。
自分が閉じ込められた事でケイは先ほどの話に一層真実味を感じげんなりとする。
そこまでずっと一緒にいたわけではない、あまり思い入れがあるわけではないが、自分を育ててくれた親代わりの者だ。
――信じたかったな。
そう思い立ち上がる。
真実を知った以上、彼は間違いなく殺されるだろう。 |
|
また、殺されなかったとしてもそんな状況に居て、自分の役目が駒だと分かった今、政府にとどまる理由もない。
そして、このままにしておく訳にもいかない。
ケイはパキッと指を鳴らすと鍵の前に手をかざした。
「まさか今更この力使うとは思わなかったな」
手のひらに薄い金の光が集まり、風が起こる。同じ色の髪をなびかせながらその手に力を込めた。
次の瞬間鍵は音もなく砕け散る。
そっとその鉄の扉を開けるとケイはにやりと笑った。
「まさか俺にこんな力あるなんてあの人も知らないだろうな」
そっと足を忍ばせ、見張りの方へ歩み寄る。見張りの者はその気配に気づくが彼が振り向くより早く、ケイはその手を振りおろし、見張りのものはその場に崩れ落ちた。
そのまま彼の懐から一丁の拳銃と鍵を取り出し、ドアの方へ向かおうとしたとき、一つの牢の中にあの少女がいることに気づく。
「君…」
ケイは言いかけた口を閉ざし見張りから奪った鍵を使ってその戸を開ける。
「早く!」
「……」
前へ 閉じる 次へ
|
|