上がると少女はキメラの肩口から斜めにバッサリとその身体を切り裂いた。
キメラは再び耳につく嫌な叫び声と共に地に倒れ、そして今度はまったく動かなくなる。
少女は溜息を一つ吐くと、剣を振り血を落とすと彼らの方を向いたが、既にそこに男の姿は無かった。
「逃げられたか」
そのまま、青とも黒ともつかない美しい刀を持ったままレオの方へ近づく。
レオは恐怖の色を顔に浮かべ、そして涙眼で言った。
「なんで、朝は刀なんか持ってなかったのに…」
「ああ、朝は宿に置いてきてたのよ。何故か町には魔物出ない
からね」
「そんな…こ、殺さないでっ!!」
その言葉に少女はピクリと眉を上げ剣を地に突き刺し、レオの顔に自分の顔を近づけると彼を睨みつける。
「失礼ね!危ないとか言って助けといて、今更殺さないではな
いでしょう?あたしはただパンを届けに来ただけよ」
「…パン?」
意外な言葉にレオは眼を丸くし、少女の顔を見詰めた。
「ほらっ」
投げられたそれは今朝の長いフランスパン。
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「こ、こんなの」
いらないと言って投げ出そうとした彼の腕を身をかがめて掴み制した。
「只人からはいらないってか?でも…」
少女は片目をつぶり帽子を脱ぐ。
「同族からならいいんでしょ?」
帽子を取ったそこからは黒い兎の耳のようなものが生えている。
「あ、亜人!?でも英雄は只人だって…それに亜人は未だ殺さ
れてるって」
困惑しているレオに少女はあっさりと答えた。
「ああ、あれ?あれは只人が亜人なんかに助けられたって事が
嫌で吐いた嘘よ、嘘」
「う、嘘?」
「ああ、でも亜人が未だそれに殺されてるってのは半分当りか
な?」
「なっ、同族を殺してるの!?」
少女はいたずらっぽく笑いかける。
「まさか。でも誘拐しちゃってるから♪」
「ゆ、誘拐?」
更に困惑し、怯えるレオにとうとう少女はお腹を抱えて笑い
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